

温間成形
[warm forming]
板を常温より高い温度に加熱して行う成形加工。一般に、金属は常温より温間の方が伸びが大きく成形性が向上するので、常温での成形がむずかしい場合に温間成形加工を行う。温間より高い温度の場合を熱間成形という。温間と熱間の境界温度は金属により異なり、チタンの場合は通常約600度以下を温間という。
純チタン板の温間成形を行う場合、約200℃まで伸びは向上し成形性は大きく改善するが、約200℃から約500℃の温度間では成形性が低下することがあるので注意を要する。この現象が特に比較的純度の高い1種と2種(JISまたはASTM)に見られるのは、変形に制限を受けるからである。チタン合金板の場合は、通常、温間よりさらに高温で成形される。温度が高いほど成形性は向上し、純チタンのような挙動は示さない。
n値
[n value]
加工硬化指数ともいう。JISでは、「真応力σと対数伸びεとの関係をσA=Cεnで近似させたときのnの値。薄鋼板では、通常、ε=5~15%、ε=10~20%などの全伸びの範囲について近似したときのnの値を、プレス成形性に関連する特性値として用いる」と定めている。
板材の成形時における加工硬化の程度を表す目安になる数値であり、n値が大きいほど局部的なくびれの発生が抑制され張出し成形が容易になる。
純チタンはステンレス鋼や普通鋼と比較してn値は小さいため、変形が局部に集中しやすく、成形限界も低く、張出し成形の際には注意を要する。
応力腐食割れ
SCCとも言う。腐食環境に置かれた金属材料に引張応力が負荷され続けると、応力腐食に起因する割れが発生し、それが時間の経過と共に拡大して、最終的には破断に至る現象。応力腐食割れは純金属よりも合金で生じやすい。また、材料本来の破断応力よりもずっと小さな応力でも破壊に至ることがある。負荷応力が大きい場合は、比較的弱い腐食環境でも破壊に至る。チタンはステンレス鋼に比べ応力腐食割れ感受性は小さい。
一段還元法
[single stage reduction]
四塩化チタン(TiCl4)をナトリウム(Na)で還元して金属チタンを製造する方法(→ナトリウム還元法)の一つ。二段還元法がTiCl4をNa還元によって一旦ニ塩化チタン(TiCl2)にして、さらにNaで還元してチタンを得るのに対し、1回の反応TiCl4+4Na=Ti+4NaClでチタンをつくるプロセスである。
AP
焼きなましと酸洗のこと。チタンでは、大気中で焼きなましした場合は必ず脱スケールのため、ショットブラストまたはソルトバス処理をしたあと酸洗処理を行うので、このように並べていう。
アルカリイオン整水器
[alkaline ion making equipment]
大気汚染、環境ホルモンと健康をおびやかす要因は増える一方である。このような生活環境のなかで健康に関する関心は強く、数多くの健康食品などがあふれている。そのうちの一つにアルカリイオン水がある。これは水道水を電気分解すると水酸化物イオンが陽極側に移動してアルカリイオン水が生成する。陰極側には水素イオンが集まり酸性水ができる。アルカリイオン水は胃酸過多・下痢などの防止に、酸性水はその殺菌作用から食器洗浄などに利用できる。この電気分解に使う電極(陽極と陰極があるが、水道水中のカルシウムイオンが電極に付着するので、陽極・陰極を交互に入れかえて使っている)にチタン表面に白金を焼成したものを使う。従来のフェライトやカーボン電極が短寿命であったのを大幅に改善した。白金焼成チタン電極の寿命は10年以上といわれている。
HDH粉末
HDHは水素化脱水素粉末ともいう。クローク法スポンジチタンまたはチタン材料を水素化して粉砕し、脱水素して製造したチタン粉末。スポンジチタンは多孔質であるが粘りがあるので、そのまま粉砕して粉末にするのは困難で、水素化すれば脆くなるのでそれを利用して粉末を作る。水素化チタンTiH2の組成まで吸収させればもつろんであるが、その組成まで吸収させなくても安易に粉砕が可能である。脱水素は、500℃以上の温度で行い、温度が高くなると水素の放出ははやいが、粉末の焼結がおこるので注意する必要がある。
アモルファス構造
[amorphous structure]
非晶質構造ともいう。固体状態で、原子が規則性のないバラバラな配列をしている構造。結晶構造に対していう。一般に、溶融状態から急冷してつくられる。非平衡相なので、高温に保持すると平衡相である結晶構造になる。
アルミニウム当量
α相安定化元素の機能を示す指標。チタンにアルミニウムを添加し、ある限度を超えるとTi3Alが生成する。この挙動は、アルミニウムだけではなく、他のα相安定化元素でも同様な機能を有する。
異方性
異方性とは物質の物理的性質が方向によって異なることであるが、チタン板圧延材で圧延方向とその直角方向で機械的性質に差が認められる。これはチタンの結晶組織が最密六方晶でその長軸(C軸)方向が当初ランダムであったのが圧延加工が進むにつれて減肉に対して抵抗するような向き(板厚方向に結晶のC軸が立ってくる向き)に結晶組織が並んでくることに起因する。実用上、この異方性が問題になることもあるので、厳しい張出し成形のような場合には配慮が必要になる。
遅れ破壊
高張力鋼などが静的な引張荷重を加えられたままの状態で長時間を経過した後、突然破壊する現象。原因は、腐食環境または周辺雰囲気中に存在する水素ガスが徐々に鋼中に拡散浸透して微小な割れをつくったり、材料内部に存在した欠陥部に集まり、その量があるレベルに到達すると、水素脆性をひきおこすことによる。したがって、破壊までの時間は、応力が小さいほど、また温度が低く、拡散浸透する水素の量が少ないほど長くなる。純チタンやチタン合金では通常の環境下では発生しないが、水素を吸収するような環境下では水素脆化をおこすので、遅れ破壊には十分な注意が必要である。 |
応力除去焼なまし
低温焼なまし・ひずみ除去焼なましともいう。強度や延性に影響を及ぼさず、残留応力のみを除去するために、比較的低温で行われる焼なましであり、純チタンは約400~600℃である。
アモルファス合金
[amorphous alloy]
常温の固体状態でも結晶構造をもたず、アモルファス構造をした合金。製造方法には、ロール法(箔)・ガスアトマイズ法(粉末)・液中紡糸法(細線)などがある。通常の結晶質合金とはいちじるしく異なった性質を示し、高強度材料・耐食材料・高透磁率材料などとして実用化されている。
イオン伝導
イオンの拡散による電気伝導、イオン伝導はイオンの拡散速度が律速するので、温度が高いほど伝導度は大きくなる。セラミックスのなかには、安定化ジルコニアなどのイオン伝導をする物質や混合導電体のTiS₂などがある。
アナターゼ
鋭錐石ともいう。二酸化チタン(TiO2)の結晶型の一つ。高温でルチルに転移する。この結晶型の鉱石のこともアナターゼとよび、また天然アナターゼともいう。ブラジル・ミナスジェイラス州のアラシヤ地区で1971年にアナターゼ型のTiO2大鉱床が発見された。埋蔵量は5千万トン以上といわれる。ニオブ鉱石・希土類鉱物と共存しているため、不純物の関係で今のところチタン資源としては利用されていない。 |
SPF/DB
超塑性成形/拡散接合ともいう。二層の金属組織をもち超塑性をおこす金属材料の板を高温で超塑性を利用して成形し、同時にその温度で拡散接合する。変形速度が小さいので超塑性変形には長時間かかり、その間に拡散接合を行いことが出来る。チタンでは成形の難しいチタン合金の板に多く適用されている。使用例として、Ti-6Al-4V合金の板からアルゴンガス圧力を利用して、航空機用各種パネルがSPF/DBにより製作されている。
アサーマルω相
[athermal ω phase]
非熱的ω相・焼入れω相ともいう。チタン合金のβ相において、焼入れ過程で生成するω相。β相安定度の比較的低い組成で、無拡散変態で生じるから、急冷によりその生成を阻止することはできない。
MMC
[metal matrix composite] 金属材料を基質とする複合材料。基質と強化材の種類で分類される。
アップグレーディング
一般に「改良・格上げする」あるいは「等級を上げる」の意。チタン製造ではイルメナイト中の鉄を除去し、酸化チタン(TiO2)純度を上げるプロセスをいう。
エリクセン値
板材の張出し性を評価するエリクセン試験によって求められた値。
エリクセン試験は、試験片をダイスとしわ押さえで拘束し、穴径27mmのダイス穴内に球径20mmのポンチで張出す試験である。JIS Z2247に、エリクセン値は「エリクセン試験において、試験片の少なくとも1ヶ所に、裏面に達する割れができるまでに、パンチ先端がしわ押え面から移動した距離をミリメートルであらわす」と定められている。
チタンのエリクセン値は、もっとも成形性のよいJISの1種でもステンレス鋼(SUS304)よりも低く、張出し性はよくないが、結晶粒を大きくすることによりある程度改善できる。
応力腐食
SIC(stress induced corrosion)・応力誘起腐食ともいう。応力が加わっていることにより加速される腐食。溶接構造物や冷間加工した部品など、金属材料に残留応力が存在している部分は、応力がまったく存在しない部分よりも急速に腐食される。また、外部応力が負荷されている場合も腐食は加速される。
エロージョンロコロージョン
腐食性の高速流体中に置かれた金属材料の表面を覆っていた保護性の酸化皮膜がエロージョンによって破壊されることにより、腐食速度が加速される現象。エロージョンと腐食とが重畳する為、金属材料の損傷が著しく加速される。
エロージョン
高速で流動する流体中に置かれた金属材料が、流体との衝突による衝撃的な外力により機械的な変形や損耗を受ける現象。流体には、粉体を含んだ液体や液滴を含んだ気体もある。エロージョンにはキャビテーションによるもの、固体粒子の衝突によるもの、液滴の衝突によるものなどがあり、機械的な損傷に加えて化学的な損傷が重畳する場合もある。⇒エロージョンロコロージョン。
耐食性に優れたチタン合金で作られた、高温の液体中を高速度で回転するタービンブレードなどでもエロージョンが発生するので、防止する為の溶射などの表面処理が施される。
アフターシールド
アーク溶接やTIG溶接において、溶接している局部をトーチから出る不活性ガスで遮断(シールド)するだけでなく、溶接部が汚染されないように十分冷却されるまで、溶接している側の表面を適当な治具により不活性ガスで遮蔽すること。また、その治具。これに対して、溶接している面と反対側の裏面を適切な治具により不活性ガスで遮蔽することをバックシールドという。チタンの溶接はシールドにより品質が評価されるので、種々の形状を溶接する場合に、適切なシールド治具とその使用条件が極めて大切である。
圧電性
結晶に外部から力を加えてひずませると電荷分布がずれて分極が生じ、逆に結晶を電場の中に入れるとひずみが生じる、圧電効果またはピエゾ効果を生ずる性質。圧電性を示す物質を圧電体といい、天然結晶の水晶、人工結晶のチタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT、PbZrO3-PbTiO3)などがある。
厚板
厚みの大きい板。チタンのアメリカ規格ASTMでは、幅が10インチ(254mm)より大きく板厚が0.187インチ(4.75mm)より大きい板をプレート(plate)という。チタンの厚板は通常熱間圧延で製造する。純チタンの厚板は板厚4mmから約100mm。幅は広いもので4.5m、長さは14mまでのものが市販されている。
押出し
容器の中の材料を工具の穴から押出して加工すること。通常、高温で行い、管や各種型材を製造する。一般に、熱間押出しでは、肉厚3~50mm、外径25.4~280mmの感が製造可能である。
アルゴン
希ガス元素の一つ。大気中に0.934%(体積比)存在。液体空気を分留して、酸素とアルゴンの混合気体とし、水素との反応で酸素を除き、その後精製して、純度99.999%以上のものが工業的に製造されている。低~高温で、ほとんどすべての物質と反応しない。チタン関係では、製錬・溶解鋳造・加熱・溶接などの際に、雰囲気ガス・カバーなどとして広く活用されている。なお、アルゴンは空気より重いので凹所に溜り、その中に人間が入ると窒息死するので注意を要する。
薄肉溶接管
肉厚が2mm以下の溶接管。チタンでは純チタンに限定され、薄肉溶接チタン管という。通常、成形ロールが連続して並ぶ造管ラインで連続的に製造する。
α型チタン合金
略してα合金とも言う。α相単相で構成されたチタン合金。α相安定化元素のみ、及びα相安定化元素と中性元素とを組合わせて添加した組成で、Ti-5Al-2.5Sn合金やTi-8Al-Mo-1V合金などがある。
r値
ランクフォード値ともいう。引張試験によってえられた数値から算出する。JISでは「板状引張試験片の幅方向ひずみと厚さ方向ひずみまたは伸びとから次式によって求められる値。薄鋼板のプレス成形性に関連する特性値として用いられる。
アーク溶解
アーク熱を利用した材料の溶解法。
チタンのアーク溶解には、消耗電極式真空アーク溶解・非消耗電極式アーク溶解・プラズマアーク溶解がある。
アーク溶接
アーク熱を利用した材料の溶接。同じ金属同士をつなぎ合わせる溶接方法。チタンのアーク溶接はTIG溶接・MIG溶接・プラズマ溶接がある。
圧延
回転するロールの間で材料を圧縮変形する事により厚み・幅・径等を小さくし、板や棒、線等を製造する加工。チタンは熱間圧延(ホット材)・冷間圧延(コールド材)が主である。まれに温間圧延を行うことがある。
圧延圧着
2枚またはそれ以上の枚数の板を圧延により密着させて1枚の板にすること。
アニール
α相
αチタンの固溶体。チタンの低温相であるαチタンの結晶構造を保った範囲内で、合金元素を固溶した相。
α”相
β相安定化元素量が多く、Ms点が低いβ相から生成するマルテンサイト組織。チタン合金では、β相の安定度に応じて2種類のマルテンサイト組織が生成する。α”相は、α’相とは結晶構造が異なり、最密六方格子よりわずかに変形した正方晶構造である。
αチタン
チタンの同素変態において、最密六方格子の結晶構造をとる低温側安定相。
α‐β型チタン合金
略してα-β型合金ともいう。α相とβ相の二相で構成されるチタン合金。代表合金が、チタン合金総生産の約75%を占めるTi-6Al-4V合金である。
α相安定化元素
チタン合金の低温相であるα相の存在領域を高温側に拡大し、その構造の安定性を高める合金元素。また、α-β二相共存領域では、この元素はβ相よりα相に優先的に固溶する。アルミニウム・スズ・酸素・窒素・炭素などがある。なかでも、アルミニウムと酸素が主要元素として広範に添加される。アルミニウムは強化作用と耐酸化性を改善する能力が高く、耐熱合金では不可欠な合金元素である。酸素はβ相よりα相への溶解度の方が大きく、高温からの冷却過程で酸化物として析出する挙動(→侵入型固溶元素)を示さないので、安価な強化元素としてコスト指向型合金に多用されている。
圧縮強さ
圧縮試験における最大変形応力。引張試験の場合と同様に、荷重-縮み曲線から応力-ひずみ曲線を求めることができ、縦弾性係数(ヤング率)・比例限・弾性限・降伏強さ・圧縮強さなども求めることができる。圧縮変形とともに試験片の断面積は大きくなるため、延性の高い材料では荷重が大きくなっても破壊しない場合がある。このような場合、圧縮降伏応力を圧縮強さの代用とすることがある。変形量が大きくなると、試験片と装置の接触部分での摩擦が生じ。均一な変形を阻害するため、試験結果の解析が困難となることが多く、圧縮試験を行うことは少ない。
工業用純チタンの場合、常温では、引張試験における0.2%耐力は274~657MPa、圧縮試験では382~617MPaである。426℃では、引張試験における0.2%耐力は88~137MPaで、圧縮試験での137~274MPaとは強度さがみられる。
ISO(アイエスオー)
イソ・イゾともいう。国際標準化機構の略称。国際的な規格の制定とその普及を図ることを目的として1947年に発足した非政府間機構。2002年1月現在143カ国の国家規格機関が一国一団体で参加している。日本では1995年3月に「規制緩和推進計画」が閣議決定され、その具体策の一つとしてJISとISOの整合化の努力がつづけられている。整合化の推進にとどまらず、ISO規格のJISへの登録、新しいISO規格の国内における適応・実施などを含めた活動を一括しISO化と称している。
チタンの規格は近年までISOには制定されていなかったが、新しくTC79(第79専門委員会、軽金属及び同合金の規格検討委員会)のもと、日本を幹事国としたSC11(第11分科委員会、チタンの規格検討分科委員会)が2003年に設置され、規格化が始った。
イオンプレーティング
PVD法による表面処理の一つ。真空中で蒸発物質をイオン化し、高電圧をかけて負極にした材料に衝撃的に蒸着すること。イオン化する方法は、少量のアルゴンガス雰囲気で高電圧直流プラズマ放電・高周波プラズマ放電・電子ビーム金属プラズマなどがある。電圧は、500V~2kVが使用される。特徴は蒸着材料の選択自由度が大、高純度な膜の生成、密着性が良好、低温処理で可能などである。雰囲気に反応性ガスを導入し、蒸発粒子の化合物(窒化物など)の膜を生成できる。チタンへのイオンプレーティングは、真空中で行うので表面汚染がなく密着性が高いので適しており、耐摩耗性や意匠性の面で使用されている。
α‐β変態温度
チタンにおいて同素変態が生じる温度。チタンにおける同素変態は885℃の一定温度で生じるので、α‐β変態温度と称することができる。一方、チタン合金ではα‐β二相共存温度域が出現するので、一定温度として表示することはできない。 |
板
一次溶解
一次電極を溶解して、二次電極として使用する鋳塊をつくる溶解のこと。スポンジチタン及びスクラップの原料に含まれる塩化マグネシウムや水素など揮発物質の除去及び組成の均一化が目的である。一次インゴットと称するが、組成の不均質があり表面及び内部に欠陥が多いので、消耗電極にして再度VAR法による溶解、すなわち二次溶解を行って、より健全なインゴットにするのが普通である。
医療器具
チタンは耐食性が良く食塩を3%含む血液の付着を避けることができ、その軽量さから長時間を有する手術の用具(ピンセットやメス等)、非磁性によりMRI等の磁場の環境でも使用が見込まれるので医療器具はチタンの大きな市場である。
イルメナイト
チタン鉄鉱とも言う。チタン鉱石の一つ。砂状または塊状で産し、チタンの主要な原料鉱石。硫酸法酸化チタンの原料として大量に消費される一方、金属チタン並びに塩素酸化チタンの原料としての合成ルチルの出発原料でもある。
薄板
AP仕上げ
焼きなまし酸洗仕上げのこと、純チタン板の場合は、熱間圧延またはその後の冷間圧延後、大気中焼なまし処理、ショット処理と酸洗、またはソルトバス処理tお酸洗をしたのもので、銀白色の艶消し仕上げである。
遠心鋳造
回転している鋳型に溶湯を鋳込むこと。遠心力を利用して溶湯を鋳型に充満させ、内部欠陥を軽減させる。チタンの遠心鋳造は、高品質が要求される航空宇宙用に多く用いられている。また歯科用金属床など薄い鋳造には遠心鋳造が必要となる。
SP-700合金
超塑性合金 Ti-4.5Al-3V-2Fe-2Mo 合金の商品名。超塑性加工を 700℃で行えることから名づけられた。
ELI材
ELIはextra low interstitial の略。酸素・炭素・窒素・水素などの侵入型固溶元素の不純物量が少ない、高品位のチタン合金を表す語。チタン分野独自の表現である。これらの不純物の低減は、延性と靭性の改善にとくに効果があり、低温環境や高度の信頼性を要する用途で用いられるTi-5Al-2.5Sn合金とTi-6Al-4V合金において、ELI材が規定されている。JIS規格では、60種Ti-6Al-4V合金に対して、60E種のELI材が規格化されている。酸素・窒素・水素などの共に、侵入型元素ではない鉄も主要な不純物元素として、許容量が制限されている。
延性
破壊に至らずに引き伸ばされる材料の性質。伸びや絞りがその指標となる。試験片材料に力(荷重)を加えて伸長し続ければ、ついに破断する。破断するまでのひずみ(縦ひずみ)が大きいときを延性であるといい、非常に小さい場合を脆性(ぜいせい)であると言う。
温間加工
塑性加工の一つで、金属を常温より高く熱間より低い温度に加熱し形成する方法。加工力が小さくてすみ、寸法精度・品質の高い製品が得られる。チタンではこの温間加工を行うことが多い。冷間では加工が困難で、しかし熱間に加熱するほどでない場合に温間で圧延などの加工を行う。

高サイクル疲労
104回以上の繰返し応力負荷(降伏点以下の応力の繰返し)で破壊する疲労現象。鉄鋼材料のように、ある応力振幅以下では破壊がおこらない限界応力が存在する材料では、疲労破壊がおこるかどうかの限界応力値、すなわち疲労限度が問題となる。一方、チタン合金などのように疲労限界のあらわれない金属材料では、107あるいは108回までの繰返し応力負荷に対する、疲労強度(破壊応力)が問題となる。
管継手
管を接続するのに使用する部品。
高温強度
常温以上の温度における強度。高温で使われる機器を構成している材料の引張強さ・破壊靱性値・クリープ強さ・疲労強度などの機械的性質が、温度の上昇にともなってどのように変化(低下)していくのかを知ることは、高温用機器の設計にあたって重要な情報となる。
一般に、金属材料の強度は温度の上昇にともなって低下するが、TiAlやNi3Alなどの金属間化合物の引張強さは、常温から800℃前後までは上昇し、以後低下するので、1000℃以上の高温で使われる機械部品にとっては将来有望な材料である。
光輝仕上げ
金属光沢をもち、輝きのある板表面の状態またはその表面処理。チタンの場合は通常、真空焼きなまし上がりの表面のことをいう。光輝肌・真空焼きなまし肌ともいう。 |
クリープ強さ
一定の温度のもとで、規定した試験時間後に、材料に規定したひずみを生じさせる応力。一般的には1000時間で1%、0.1%、0.01%のひずみを生じさせる応力が用いられる。クリープ強さを調べる試験では、温度を一定に保って、応力とひずみの時間変化との関係を求め、これを複数の温度条件について行い、規定時間後に規定ひずみを生じる応力をその温度でクリープ強さとする。なお、一定温度のもとで一定時間経過後に破断するときの応力はクリープ破断強という。
金属射出成形
MIM(ミム)ともいう。金属粉末をバインダーとまぜた後、スクリューシリンダー内に供給し、ノズル(口)から押し出して型に充填して成形し、脱バインダー・焼結して粉末製品をつくる方法。比較的小さい複雑形状のものを大量につくる場合に適する。チタンの粉末が安価に多量供給されるようになると広く使われる可能性がある。
型材
圧延または押出しにより製造した各種の断面をもつ材料。L字型断面をアングル、コの字型断面をチャンネルという。その他、複雑な断面形状の型材が多くある。純チタンの型材は、主として熱間圧延により製造され、厚み3~10mmのアングル、厚み3~6mmのチャンネルが市販されている。アングル、チタン合金の型材は、主として熱間押出しで製造され、航空宇宙用に多種多様な形状の型材が製造されている。
減圧吸引鋳造
大気圧に近いアルゴン雰囲気下で溶解し、真空引きした減圧下の鋳型に鋳込む方法。歯科用や評価用ボタン鋳塊など小さい鋳物では、タングステン電極アーク溶解や高周波誘導溶解が用いられ、レビテーション溶解を用いた例もある。減圧下に鋳込む方法としては、底に穴の開いたるつぼ内で溶解しパワーアップして底をぬく方法、上方へ吸い上げる方法などがある。 |
拡散接合
溶接したい素材の清浄にした界面をつき合せ、加熱と加圧により接合面の間で原子の拡散をおこし、固体のまま接合すること。拡散接合はまず、接合面の点状に接触する部分が変形して、表面の皮膜が破壊され接触面ができる。この接触面で金属原子の拡散がおきる。高温の為クリープ変形もおきて接触面積が広がり、拡散が進む。接合面が大きくなり残存ボンドが消滅し、結晶粒界の移動がおこり、接合が完了する。接合界面に他の金属を入れる場合もある。固体のまま接合するので、高融点金属や異種金属の接合が他の方法と比較して容易である。残存する熱ひずみや応力が少ない。また、複数部品を同時に接合して複雑な形状の製品をつくることができる。
クラーク数
地球の表層部(気圏・水圏と深さ約16kmまでの地殻、合計は地球全質量の約0.7%)に存在すると推定される各元素の量を質量%で表した値。
コーティング
材料表面に他の材料を塗布または接着すること。
コーティングには(1)スプレー塗装などの塗装、(2)電気めっきなどの湿式めっき、(3)PVD法・CVD法などの乾式処理がある。→ 表面処理
工業用純チタン
略称CPチタン。純チタンとも言う。純金属が工業材料として広範に用いられているのはチタンのみで、この状況を強調して名付けられた名称。スポンジチタンの製造工程では、酸素・窒素・炭素・水素などが残留し、また反応容器から鉄などが混入し、スポンジチタンにはかなりの不純物元素がふくまれている。
完全焼きなまし
β焼きなましとも言う。残留応力と組成組織の不均一を完全に除く為に高温で処理される焼きなまし処理。チタンではβトランザス以上の温度に加熱して、除冷する処理である。同時に等軸α組織から針状α組織に変化する。破壊靱性や疲労亀裂の伝播特性の改善が特に重要である場合に適用される。
干渉色
単色で干渉縞を生ずる光学素子(薄膜)に白色光を当てたとき、波長によって明暗の条件が異なるために生ずる色。純チタンでは、陽極酸化によって表面に薄い酸化皮膜をつけると、厚さの微妙な調整が可能なので色々な干渉色を生じさせることが出来る。すなわち優れた発色性がある。
海水淡水化装置
海水を約120℃にまで加熱し、減圧したセクションに導入、沸騰・冷却を繰り返し、効率的に真水を得る装置。構造的に発電所内の復水器に酷似し、純チタン製の熱伝達管の中を冷たい海水を流し、その管外表面で水蒸気を冷却凝縮させ真水を得ている。
ガルバニック腐食
異種金属接触腐食または接触腐食ともいう。
電池作用による腐食でもあり、電食ということもある。異種金属を接触させて、これを導電性の溶液に浸すと、浸した溶液に対する自然電極電位が水素よりも低い卑な金属はイオンとなって溶液中に溶けこみ、残された電子は接触界面を通って貴な金属の方に移動して、金属の表面で次式の反応をおこす。
O2+2H20+4e=40H-
その結果、接触している金属のうちの卑な金属の選択的な腐食が進行する。これをガルバニック腐食という。
純チタンやチタン合金の自然電極電位は、海水などに対しては、白金や金などの貴金属と同様の値を示すので、それ自身が腐食されることはないが、接触している他種金属は、電位にもよるが、激しく腐食されることがあるので、構造物の材料選択・設計には注意が必要である。
海洋温度差発電
海洋温度差発電とは海面近くの海水と深海海水の温度差を利用する発電システムである。熱帯地方では海面海水温度が約30℃にも達し、数百mの深海海水は数℃である。この冷水を用いてアンモニア等の低沸点媒体を液化し、高温の海面海水で気化させ、そのエネルギーで発電機を駆動し電気を得ようとするものである。ハワイ州政府が中心になって開発を行い、1979年に最大出力35kWに成功している。日本では佐賀大学を中心に開発が進められている。この発電装置の熱交換器などに純チタン(工業用純チタン)が耐食性の点から使われている。
硬さ
金属材料の機械的性質の一つ。硬軟の程度。金属材料に、それよりも硬い物質を適当な荷重で接触させたときに生ずる痕跡の大きさで評価する。接触の方法には押込み・引っかき・反発の3方法があり、JISに規定されている硬さは押込みのブリネル硬さ、ビッカース硬さ、ロックウェル硬さと反発のショア硬さである。チタンでは通常ビッカース硬さ又はロックウェル硬さが使われる。金属材料の硬さは引張強さと相関があるので、簡便ではあるが有用な機械的性質の評価方法である。
管
[tube、pipe]
内部が空洞で、内径と外径のある長い材料。管には、押出しまたは穿孔で作る継目無管と、溶接管がある。アメリカのASTM規格では、継目無管と溶接管に関係なく、復水器と熱交換器用の管をチューブ(tube)、それ以外の管をパイプ(pipe)といい、チューブの寸法精度の方がきびしい。
チタンの溶接部は、母材と耐食性が同等で、機械的性質面でもほとんど変わらないので、生産性・コスト面から溶接管が多用されている。
機械加工
材料を、工具を用いて切削すること。広義には研削研磨・切断や、放電加工・ケミカルミリングなどの特殊加工を含めることもある。切削には、材料が回転する旋削加工、刃物が回転するフライス加工、穴をあけるドリル加工などがある。 チタンの切削は、熱伝導が悪いため局部的に熱されやすく、また活性であるため工具と焼付きやすく、他の金属材料と比較してむずかしいといわれていた。しかし、適正な条件をつかめばステンレス鋼など他の材料と同様に切削できる。 |
急冷凝固法
金属チタン
クラッド鋼板
クリープ
材料に、一定の温度のもとで、その温度での降伏応力以上の一定応力が加わった状態がつづくと、時間と共に塑性変形が進行する現象。温度がその材料の融点の3分の1以下の場合は、塑性変形はほとんど進行しないが、2分の1以上になると、荷重直後の、時間と共にひずみ速度が減少していく一次クリープ、そのつぎの、ほぼ一定の速度でひずみが増加する定常クリープ、そして、しだいにひずみ速度が加速される加速クリープを経て塑性変形が進行し、やがて破壊に至る。この、一定応力を負荷して生ずる、ひずみの時間の経過にともなう変化を示した曲線をクリープ曲線とよぶ。
クロール法
1936年にルクセンブルクのウイリアム・J・クロール博士が開発した冶金製造の製造工程。不活性ガス雰囲気にした気密性鋼製反応容器中で四塩化チタンをマグネシウムに滴下、塩素をマグネシウムと結合させて除去し単体のチタンを得る方法。この工程で得られた金属チタンがスポンジチタンと呼ばれている。
軍需品とチタン
形状記憶合金
形状記憶効果を示す合金。その機構は、温度の上下によりマルテンサイト変態とその逆変態がおこることによる、この変動挙動を容易に、しかも正確におこさせるためには、熱弾性型マルテンサイトとしての変態が必要である。金属間化合物であることは、この型のマルテンサイト変態をおこさせるのに有利で、TiNi金属間化合物は現在もっともすぐれた形状記憶合金である。
健康グッズ
チタンテープやチタンネックレス等。体内の生体電流をを調整し、筋肉のもつ力を最大限に引き出し、筋力アップならびに痛みをとる効果があると言われている。肩こり等にもよい。また、足の裏などの皮膚のかさかさを治すソックスなども商品化されている。
研削研磨
コイル
圧延、又は伸線により製造してコイル状に巻き取ったストリップまたは線。チタンコイルには、ホットコイルとコールドコイルがある。
高強度チタン合金
高比強度チタン合金。正確には高比強度チタン合金とよばれるべき簡略名。チタン合金 同士では、比重はほとんど変わらず、比強度と強度との比較はほぼ等しい順序になる。それを一因として、正確によばれることは少なく、本命称の方が広く用いられている。 α-β合金(64合金)とβ合金(15-3-3-3合金)があるが、α-β合金の方が強度には、優れているが、難削であり、曲げ加工なども難しく、歩留りが悪くなりがちである。
抗菌性
微生物を死滅させたり、その増殖を阻止する働き。光触媒作用のある酸化チタンも抗菌性のある固体物質。少量の貴金属元素を添加したチタン合金は、その表面にアナターゼ型の酸化チタン層を容易に形成し優れた抗菌性を示す。
合金
2種類以上の金属元素からなる金属。2種類の成分金属からなる合金を2元合金という。合金を作るには固体状態で成分金属元素を必要な種類と量をまぜてから、高温度に加熱して溶解し、徐冷・凝固させて原子レベルで混合した固体とする。
コールドコイル
冷間圧延または伸線により製造してコイル状に巻き取った材料のこと。チタンの場合は、冷間圧延で製造したコールドストリップと同じ意味で使うことが多い。
コールドハース溶解
桶状または皿状の水冷銅ハースを用いる溶解法。電子ビーム溶解やプラズマアーク溶解では、消耗電極式真空アーク溶解と異なり、熱源を長時間自由に制御できるので、鋳込む前にコールドハースの中で所定の時間溶解が可能である。チタン合金のコールドハース溶解は、原料に混入したHDIやLDIの介在物が除去できることから、高品質が要求される航空宇宙用品部品には一次溶解に義務づけている場合がある。 |
ケミカルリング
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スポンジチタンケーキ
多孔質・スポンジ状のチタンの塊。現行のクロール法によるチタン地金製造では、還元・真空分離の工程が終わると容器内に多孔質・スポンジ状のチタンの大塊ができ、冷却後これを押し抜き法で容器からとりだす。このとりだした円柱形に近いスポンジ状のチタンの塊を、スポンジチタンケーキという。現在、大型のものは、直径約2m、高さ約3m、重量約10トン。
CVD法
CVDはchemical vapor deposi-tionの略。化学蒸着法ともいう。表面処理の一つ。ガス状態で化学反応または熱分解をおこさせ、その生成物を材料表面に蒸着させること。一般に、高温度で行う。
スラブ
鋳塊から板状圧延製品をつくる際の中間素材で、平たい長方体、通常、約100㎜以上の厚みを有する。純チタンのスラブは、直径720~1230㎜、高さ1950~2800㎜の鋳塊から鍛造または圧延、あるいは両方の組合せにより、厚さ100~260㎜、幅600~1310㎜の寸法に製造されている。長いものでは10m以上もある。その後、表面の酸化硬化層を砥石研削または機械加工により除去し、連続熱間圧延または厚板圧延に供する。チタン合金の場合は、変形抵抗が高いがほぼ同様に製造できる。アメリカでは電子ビーム溶解によりスラブが製造されている。
スパッタリング
PVD法による表面処理の一つ。アルゴンガスを少量含む真空中において、材料を陽極に、被覆したい物質を陰極にして電圧をかけると、励起されたアルゴンガスイオンにより陰極の物質の原子が飛び出し、陽極の材料表面に堆積し膜を生成すること。被覆する陰極の物質をターゲットという。ターゲットの形に加工できれば、高融点の材料でも材料表面に成膜できる。スパッタリング中に反応ガスを入れれば、酸化物など高融点の物質を成膜できる。 純チタンをターゲットとして、窒素ガスを導入しスパッタリングを行うと窒化チタン(TiN)の皮膜が得られる。工具刃コーティングに利用されている。
穿孔圧延製管
丸素材を回転するロールの間で、心棒を中心部に押し込みながら圧延する継目無管の製造方法。純チタン及びチタン合金は、直径が約100mm以上の比較的厚肉と直径の大きい継目無管の製造に用いる。
線
ワイヤーともいう。細くて長い材料のこと。チタンでは、通常直径8mmより小さい場合にいうが、コイル状になっている場合それより大きな直径でも線という。アメリカの規格ASTMでは、線(wire)は最大断面長さが0.5~4.8mmの寸法である円またはその他の断面を持つ材料と規定している。チタンの線は、熱間圧延により製造しコイル状に巻きとられ、細いものは焼きなまし・脱スケールの後、冷間引抜きにより所定の寸法まで加工される。細いものでは直径10μm以下の線が製造されている。チタン線はメガネフレーム、各種フィルター、各種電極などに使用されている。
靱性
材料のねばり強くて外力が加えられても破壊されにくい性質。高い強度と大きな延性をかね備えているものが靱性に富む。すなわち引張試験で得られる、応力-ひずみ曲線の下の部分の面積が大きいことである。チタン合金は靱性においても、他の金属材料と比較して何らの遜色もない。
スポンジチタン粉末
スポンジファインということもある。スポンジチタンからつくるチタン粉末。ナトリウム法により製造したスポンジチタンは、粒度が小さく割れやすいので破砕によりつくる。クロール法スポンジチタンは割れにくく通常製造できない。150~250μmの粒度で、酸素含有量は低く、プレス成形性はよいが、粉末製品の疲労強度を低下させる塩化物をふくむ。
スピニング加工
板を成形する方法の一つ。板を回転する型(マンドレル)にとりつけ、へらまたはローラーなどの工具を押しつけ、マンドレルと同じ形状に成形する方法。円錐など回転対称形状品の製造に適する。すでに回転形状になった管の薄肉化にも利用できる。
スピニング加工はチタン板に適した成形法の一つである。チタン板が回転するため、潤滑の問題がプレス成形ほど大きくなく、鍋・各種容器の成形に使用される。
スプリングバック
変形したあと、弾性変形分だけもとの形の方へ戻るはね返り現象。
チタンのヤング率は鋼の約半分、また、耐力と引張強さの比が高いので、スプリングバック量は大きい。とくに、チタン合金は変形抵抗が高いので大きい。
焼鈍
焼なまし。焼なましの旧用語。
酸化皮膜
酸素と結合して酸化物が表面に生成した膜。チタンの酸化皮膜は、常温大気中において表面に数nmの厚みで非常に強固に生成し、これがすぐれた耐食性などを生み出す。掻きキズなどで酸化皮膜を除去しても、自動的に瞬時に酸化膜が生成するのでチタンの表面特性は損なわれない。酸化皮膜の厚さは、加熱や陽極酸化により厚くできる。酸化皮膜の厚みにより、表面の色が決まる。
全面腐食
均一腐食ともいう。金属の表面全体にわたってほぼ一様に腐食される腐食形態。耐食性の低い金属や強い腐食環境下でおこりやすい。 |
遷移相
平衡状態図には記載されていない非平衡相。時効にともなう析出過程においては、直接平衡相が析出するよりは、合金元素濃度が低く構造は類似した相として析出するほうが、エネルギー的に有利になる場合がある。そのため、最初準安定相として析出した後、安定相に遷移する経路をとる事がある。この準安定相を遷移相という。チタン合金では、w相・β'相などがある。 |
最高使用温度
材料が使用に耐えるもっとも高い温度。使用環境(酸化の問題)や応力の負荷状況(静的な応力の高温引張りまたはクリープか、変動応力の疲労か)により異なる。高温で使用する場合は、その他に、材料が破断するまでの時間や、破断しない場合でも、一定時間後のひずみ量が問題になる。チタン合金の最高使用温度はTi-5.5Al-4Sn-4Zr-0.3Mo-1Nb-0.5Si-0.06C合金の590℃である。 |
酸化チタン
酸洗
サンセン[pickling] 酸洗いともいう。酸を用いて材料の表面を化学的に除去すること。金属材料の脱スケール、表面処理の前処理、仕上げ処理など一般に多く使われる。チタンは耐食性がよいので、酸洗に使用される酸は限られ、硝酸(HNO₃)とフッ酸(HF)の混酸のみである。通常、フッ酸は2~10%、硝酸は5~20%の範囲で用いる。
酸洗肌
[pickled surface]
酸洗した材料の表面のこと。AP仕上げ、ダル仕上げを行った表面と同じ。純チタンの場合は通常、金属光沢はなく、鈍い色の銀白色で、ステンレス鋼の表面色より灰色がかっている。梨地肌ともいう。
シーム溶接
溶接材料を上下電極で挟み込み、電極を回転させながら溶接電流を流す抵抗溶接。 加圧部の溶接材は、溶接電流による接触抵抗熱により分子拡散して接合する。大気中でシールド(遮断)無しでも可能。ティグ溶接に比べ疲労強度の要求が少ない所に適している。
シームレス管
シームレス管はその名前の如く継ぎ目なしで材料を削り出し、引き抜き加工をした製品ですセミシームレス管は、溶接管を継ぎ目を解らなく研磨したもので、溶接管とは溶接部分がそのままの状態のもの。
四塩化チタン
[titanium tetrachloride , titanic chloride]
TiCl4。無色透明の液体。融点-25℃。沸点136.4℃。湿った空気中で加水分解し塩化水素(HCl)集の白煙を出す。
チタン製錬では中間原料として製造され、マグネシウムまたはナトリウムによって還元し金属チタンを製造する。四塩化チタンは酸化チタンをふくむ原料から塩化反応によって製造され、蒸留によって比較的容易に酸素や窒素をふくまない高純度のものが得られるので、チタンの製造に適していると同時に、白色顔料に用いられる塩素法酸化チタンの製造原料としても大量に使われている。またその他のチタン塩の製造や重合触媒としての用途がある。
歯科用材料
チタンインプラント、義歯床(入歯)やブリッジ等。軽量で口との馴染みがよく金属アレルギーがみられないので 近年普及してきている。材料にはTi-6Al-4V ELI合金が使用されている。生体適合性がよく無毒性で、強度もある。
磁化率
磁場の中に磁性体をおくと、磁性体は磁化され、ある磁化の強さをもつようになる。このときに、外から加えられた磁場の強さと、磁性体の磁化の強さの比を磁化率という。すなわち、磁化の強さをI、磁場の強さをHとすると、磁化率XはX=I/Hと定義される。
JIS(ジス)
[Japan Industrial Standard]
日本工業規格の略称。チタン関係では原材料のスポンジ規格・材料規格・分析規格のほか非破壊検査規格も制定されている。
自由鍛造
形状のついた型を使わない、通常の鍛造のこと。型打鍛造に対していう。特別な型などに拘束されず棒状などを自由に鍛伸するので自由鍛造と呼ぶ。チタンでは、鋳塊の鍛造、ビレットやスラブ製造の鍛造、各種の棒製造の鍛造などが自由鍛造である。
15-3-3-3
(Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al合金)略称15-3。準安定β型チタン合金の代表合金の一つ。板材として用いる為冷間加工性の改善を意図して開発された。すぐれた塑性加工性と共に、時効硬化性・溶接性・鋳造性などもすぐれた万能性合金。
純四塩化チタン
チタンの工業的製法において、塩化直後の粗四塩化チタンを蒸留工程を通して99.98%以上の純度の四塩化チタンにしたもの。
純チタン
純チタンは、主として酸素含有により4種類(JIS規格1種、2種、3種、4種/ASTM規格Gr.1,Gr.2、Gr.3、Gr.4)に分類され、強度への影響が大きい酸素の上限値で決められている。1種から4種になるに従って、酸素以外の鉄、窒素、炭素の含有量はわずかに増加する傾向であり、引張強さは上昇し、伸び、絞りは低下する。
常磁性
外部磁場をかけないときはまったく磁化はせず、外部磁場をかけたときだけ、それと同じ方向にわずかに磁化される性質。通常は、強磁性や反強磁性のような磁気モーメントの長距離秩序はなく、磁気モーメントの向きは無秩序であるが、弱い磁場中ではわずかに配向して磁化され、強い磁場中でも磁化はほとんど増加しない。すなわち、磁化率はきわめて小さい。純チタン及びチタン合金は常磁性体である。
真空蒸留
減圧蒸留ともいう。装置内をポンプで排気して減圧(通常1000~0.1Pa程度)し、当該物質の沸点を下げて効率的に蒸発させる手法。チタン地金製造の過程で、この手法が利用されている。
スエージ加工
スエージングともいう。棒・線・管などの金属材料を工具の間で圧縮する加工。回転しながら圧縮加工するのがロータリースエージ加工である。通常冷間で行う。純チタンの棒・線の小ロット加工に使われる。
ストリップ
条ともいう。帯状の長い板、通常 コイル状に巻き取られている。熱間圧延したものをホットストリップ、冷間圧延したものをコールドストリップという。チタンのアメリカの規格ASTMでは、幅が24インチより狭く板厚が0.187インチ以下の板をストリップと定義しており、特に寸法を規定していない日本とことなる。
接合
接合技術とは物と物とをくっつける技術で、機械的締結、溶接、拡散接合のような圧接、はんだ付けのようなろう接および接着剤を用いる接着技術がある。チタンを接合する分野では航空機機体およびエンジンで多くのチタン製ネジなどを用いる接合技術、化学プラントなどで使われる溶接、爆着、熱延圧着などが用いられる。また、発電所復水器の熱交換器用純チタン管はTIG溶接で連続的につくられた溶接のままで使用されている。
穿孔
材料に孔をあけること。穿孔には、切削による方法、プレスで材料を押し広げて孔をあける方法、プレス切断による方法などがある。チタンの穿孔には、発生する熱を蓄積しないように切刃部に切削油を供給する穴をもつ高速度鋼(ハイス)のドリルが適している。硬さの大きいチタン合金には超硬ドリルも使用される。プレス切断による方法は薄板に使用される。この他に、高圧水を使用するウォータージェット・ガス・アーク・レーザー・放電加工により穿孔することもできる。 |
スポット溶接
抵抗溶接の一種で、上下に電極のある一個所で重ねた材料を溶接すること。条件によっては、大気中でシールド無しでも可能。点溶接ともいう。
スポンジチタン
クロール法で製造された多孔質・スポンジ状のチタン地金。破砕しインゴット製造の原料となる。
なお、1990年代まではナトリウム還元法で製造されていたチタン地金もあり、同じような性状なのでこちらもスポンジチタンと称していた。
成形加工
板形状の素材から希望する形状に変形すること、広義には、板形状だけでなく管・棒・線などをふくむ素材を切削でなく変形により希望する形状を得る方法のこと。板の成形加工には、曲げ成形、深絞り成形、張出し成形、伸びフランジ成形などがある。純チタンの板の成形は、ステンレス鋼など他の金属と比較して劣るとはいえないので、適正な条件を見つければ常温で同じ形に加工できる。加工が難しい場合には純度がより高い材料を使用し、高い温度で加工する。チタン合金板の成形加工は、純チタンと比較してむずかしく、常温での加工性が劣り変形抵抗も大きいので一般に600℃以上の高温で行う。
スリット
広幅のストリップをより狭い所定の幅のストリップに連続的に切断すること。チタンでは薄肉溶接管製造用のフープをつくるときに広幅のストリップからスリットにより製造する。
生体適合性
生体適合性:[biological conformity]
人体に埋め込まれても体液に腐食されず、無毒であり、長時間の使用に耐える材料の性質。
金属材料ではチタンもステンレス鋼やCo-Cr-Mo合金と並んで生体適合性があり、機械的性質などを考慮すると、もっともすぐれた生体材料である。
切断
材料を切る事。一般的な切断方法として、鋸切断・シャーリング切断・高圧水で切断するウォータージェット切断の機械的切断方法と、ガス切断・プラズマ切断・レーザー切断等の熱的切断方法がある。板の厚みや径の大きさによって、切断方法や切断可能な機械も変わってくる。
切削
材料を刃物で削ること。機械加工ともいうが、機械加工は切削以外の切断などをふくめて広く使うことがあるので、機械加工の一つを切削と考えて良い。チタンの薄い切り粉や微粉は表面積が大きいので、火花などの着火源により容易に発火するので注意が必要。
塑性加工
材料に荷重を加え変形させ、荷重を除いても残る変形を利用する加工。塑性加工には回転するロール間で変形させる圧延加工などがある。

耐候性
屋外の自然環境にさらされた材料が、大気・太陽光・雨や霧などの水分、各種の汚染物質による酸化・変色・腐食などの老化作用に耐える性質。これによって、屋外で使う材料の耐用年数が決まる。
純チタンやチタン合金は、実用金属材料中では、もっとも耐候性に優れている。
継目無管
シームレス管ともいう。溶接管などに見られる継目の跡のない、押出しなどで製造した管。溶接管に対する語である。
純チタンの継目無管は、通常ガラス潤滑の熱間押出し法(ユジン・セジュルネ法)とその後の冷間圧延または冷間抽伸(引抜き加工)により製造する。製造可能な概略寸法は肉厚1~10mm、直径16~100mmであるが、それより厚肉・太径の管は穿孔圧延製管法による。化学工業用にチタンが用いられた当初はよく使用されたが、チタン溶接管の製造技術が進歩するにつれ、溶接部の耐食性が母材と変わらないことや安価なことから溶接管が多く使用されるようになった。
チタン合金では、Ti-3Al-2.5V合金が航空機の油圧配管に使用されている。押出しおよび冷間圧延により製造されている。海底油田に使われるライザーチューブはTi-6Al-4V合金で穿孔圧延製管法により製造している。
転造
溝などのついた複数の型(ダイス)の間を回転しながら押しつけ加工すること。純チタンの溝付き管(フィンチューブ)やネジの製造に常温で使用される。
耐食チタン合金
チタンの耐食性を合金元素添加により改善した合金、
工業用純チタンは、海水程度の環境下での全面腐食に対しては、ほぼ完全な耐食性を示す。しかし、高濃度塩化物イオンの高温環境下では、局部腐食の一種である隙間腐食が生じる。また非酸化性環境下での耐食性は劣る。この両者の耐食性を改善した合金を耐食チタン合金という。前者に対しては、貴金属元素添加が効果的であることが明確にされ、Ti-0.15Pd合金を発端とする耐隙間腐食チタン合金が開発されている。後者に対しては多量のモリブデン・タンタル・ジルコニウムの添加が有効であることが明らかにされ、Ti-15Mo-5Zr-3Al合金などが開発されている。
展伸材
ミル製品ともいう。展伸により製造した材料。圧延・押出し・鍛造などの加工を展伸という。チタンの展伸材は、板・条・棒・線・鍛造品・継目無管・溶接管・スラブ・ビレットなどインゴット以降の塑性変形した加工品をいう。広義に使う場合は、鍛造品・粉末加工品を含め、原料のスポンジチタンと鋳塊を除く全てのチタン製品をまとめていう。
窒化
窒化物を生成するか、材料の中に窒素が入り込むこと。窒化チタン(TiN)は非常に硬いので耐摩耗用に、また鮮やかな金色を示すので意匠用に早くから使用されてきた、チタンを窒化するのは、⑴高温高純度窒素ガス中に保持、⑵高温の純TiN粉中に保持、⑶高温の100%窒素ガス中でグロー放電させるイオン窒化などがある。
チタン粉末
直径が約300μm以下のチタン粒。チタン粉末には、スポンジチタンを破砕してつくるスポンジチタン粉末。チタンを水素化して破砕し脱水素するHDH粉末、滴下する溶湯に高速アルゴンガスを吹付けてつくるガスアトマイズ粉末。高速回転するチタン電極を溶解してつくる回転電極法粉末などがある。チタン粉末製品の特徴は、歩留りの向上と工程短縮によるコスト低減。切削費の低減、溶解法では不可能な高性能チタン合金の製造などがある。 |
電気抵抗
物質に電圧Vを加えたとき電流Iが流れ、電圧Vと電圧Iとの関係が式V=IRで示されるオームの法則がなりたつ。この式のRを電気抵抗と呼ぶ。単位はΩである。なお、金属の電気抵抗は、電荷を運ぶ電子が物質中に移動する過程で、結晶格子の熱振動や不純物の存在などによって散乱する結果生じる。したがって、合金の電気抵抗の方が純金属よりも一般に大きい。
電解槽
電解液(水溶液や溶融塩など)を入れ、電解を行う容器。容器と電極・電解液・隔膜などを含めた電解のための装置全体をいうことが多い。
チタンクラッド材料
チタンのすぐれた耐食性を利用すると共に、コスト低減、力学的性質の補完、他の機能性能との併用をはかるため、チタンを表層として他の材料と合せ接合したクラッド材。
抵抗溶接
接合する部分に大電流を流し、発生する抵抗熱で加熱し圧力を加えて接合する方法。スポット溶接とシーム溶接は、抵抗溶接である。チタンの抵抗溶接は、普通鋼と比較して電気抵抗が大きく発熱しやすく、熱容量が小さく加熱しやすいので有利である。重ねた材料上下の電極で加圧して溶接するので、溶融部に大気をまきこむ恐れなく、シールドガスは不要である。
チタンクラッド鋼板
チタンを鋼板に接着した合わせ板。
耐力
降伏点が明瞭にあらわれない金属材料の引張試験においては、0.2%の永久ひずみを生じる応力を0.2%耐力として、降伏強さのかわりに用いる。
チタンの耐力は大きく、普通鋼の179(N/mm2)に対して、純チタンは277(N/mm2)、合金は909(N/mm2)である。
耐食性
金属が腐食に耐える性質。酸・アルカリ・海水といった腐食性の水溶液中で金属が溶解する場合と、湿度の高い空気中に放置した場合に金属表面に酸化被膜すなわち錆が発生して、金属が侵される場合とがある。純チタン・チタン合金は、実用金属材料の中で最も耐食性に優れている。(金や白金を除く)多種多様な環境で極めて安定した不動態被膜で保護され、海水中では白金に次ぐ耐食性を持つ。塩化物濃度の比較的高い領域の酸化性雰囲気で極めて安定した耐食性を持つ。
耐食材料
耐摩耗性
材料の磨耗に対する抵抗性のこと。材料の表面が、固体や粉体などと動的に接触する、いわゆる摩擦によってすりへることを磨耗といい、磨耗の形態には、凝集磨耗・アブレシブ磨耗・腐食磨耗・疲労磨耗などがある。これらの磨耗に耐えるようにするため、種々の表面改質処理が施されるが、浸炭や窒化などによって材料表面に硬化層を形成させるのが一般的な方法である。
純チタンやチタン合金は同種金属と焼付きを起こしやすく、金属材料の中では耐摩耗性に劣るという欠点があるので、湿式めっき・窒化・ホウ化などの熱拡散法、肉盛溶接法、溶射、CVDやPVD、それにイオン注入といった表面改質法により耐磨耗性の改善がはかられている。
脱水素処理
材料に含まれる水素を高温真空中にて除去すること。チタンの脱水素処理は、製造加工中に水素を吸収した鍛造品や板を真空炉の中で高温に加熱し、通常100ppm以下にする。脱水素は約550℃以上で活発になる。高い温度程良いが、最終熱処理より低い温度で行う。 |
脱スケール
ダル仕上げ
AP仕上げともいう。表面処理の種類の一つで、光沢の無い鈍い色の表面の状態またはそれを得るための表面処理。チタンの場合は、酸洗仕上げまたはロール仕上げをして酸洗肌・梨地肌とする。
鍛造
チタン
チタン鉱石
チタンを採算が取れる限界の濃度以上を含む鉱石。チタンは鉱石中に酸化物の形で存在し、組成や含有量などでいくつかの鉱石が存在する。ルチル・リューコクシン・イルメナイトが現在利用されている。
チタン合金
純チタンに合金元素を添加して耐食性、強度、耐熱性等の特性を改善・向上させたもので、その目的によって耐食チタン合金、高強度チタン合金に分類することが出来る。
多相合金
複相で構成される合金。チタン合金においては、基質のα、β相の他に多くの析出相が生成するので、ほとんどの実用合金は多層合金である。
チタン材料規格
チタン酸バリウム
チタン非破壊検査規格
チタンおよびチタン合金の非破壊検査規格は、「JIS H 0515, 0516」にチタン管の過流深傷検査と超音波探傷検査が「JIS Z 2306, 3107」に放射線透過試験に関する事項が定められている。
チタンメッキ(コーティング)
窒化チタン(TiN)
電解
電気分解の略。電解質溶液や溶融塩などイオン導電体に一対の電極を挿入し、これに通常直流電源をつなぐと陽イオンは陰極へ、陰イオンは陽極に向かって移動して電流が流れ、その結果電極面とイオン導電体の界面で化学変化がおこる現象を電解という。
電解研磨
材料の表面を電気分解で除去し、なめらかな表面を得る方法。通常、機械的に検索研磨研磨した後に電解研磨を行う。表面の凹凸をなめらかにするとともに残留する研磨残渣を完全に除去できる。短時間で研磨面の光沢が得られる長所があるが、処理できる材料の面積は小さいものに限られる。
チタンの電解研磨は、チタンが酸化されやすく表面に強固な酸化皮膜が形成されるので高い電圧により行う。エチルアルコールにイソプロピルアルコール・塩化アルミニウム・塩化亜鉛を加えた、水を含まない電気分解用液が適している。
透磁率
[magnetic permeability]
強さHの外部磁場中に磁性体を置いたときに、磁性体の内部に発生した磁場を磁束密度Bで表示した場合、BとHとの比μ=B/Hをその磁性体の透磁率という。
鋳造
溶融させた金属を鋳型に流し込んで、鋳型の形状のとおり凝固させて金属を製造する方法。 鋳造は複雑な形状のものを作製できるというメリットがある。その反面、強度のバラツキが大きかったり、 残留応力が発生しやすいというデメリットもある。
TIG溶接
不活性ガスの雰囲気中で非消耗のタングステン電極と母材との間に発生するアーク熱により接合する方法。チタン溶接の主流。コンタミネーションを防ぐため、ガスシールドが最も重要。
電解複合研磨によるチタン鏡面仕上げ

熱膨張係数
熱膨張率ともいう。圧力を一定にして温度を上昇させた場合に、物体が膨張する割合。体積が増加する割合を体積膨張係数、長さが増加する割合を線膨張係数という。いずれも、0℃の値を基準とし、体積膨張係数はα=(1/Vo)(dV/dT)、線膨張係数はβ=(1/lo)(dV/dT)で与えられる。 チタンの線膨張係数は 8.64×10-6乗/℃でアルミニウムの3分の1、鉄の4分の3である。
ニアネットシェイプ
機械加工した最終製品の形状に近く、切削量の少ない形のこと。チタン合金の型打鍛造において、恒温鍛造は最終形状に近い薄肉に鍛造できるので、ニアネットシェイプに加工出来る。
熱延板
熱間圧延して製造した板製品。広義にはホットストリップも含む。純チタンの熱延板は、鋳塊からまずスラブを作り、その後、厚板圧延また連続熱間圧延によりつくる。生産性を上げ、コスト削減のため製鉄所の鉄鋼用設備が使用されている。チタン合金の場合は、β合金を除き、すべて熱間で圧延する。薄くなると、重ねてそれを鋼板で全周をつつみ熱間圧延をする。
伸び
引張試験における変形量を表す値。変形後の引張試験片の標点間距離Lと変形前の標点間距離Loを用いて次式で表される。e=100x(L-Lo)/Lo (%) 弾性変形範囲内を弾性伸び、局所的なくびれを生じない範囲の伸びを一様伸び、破断までの伸びを破断伸びという。純チタンの伸びは酸素・窒素・炭素などの不純物元素量の増加により著しく低下する。純チタンでは18~30%程度の伸びであり、(→引張強さ)、純ニッケルや純アルミニウムで得られる40~50%の伸びと比べると小さいが、ヨード法で作製した高純度のチタンでは50%をこえる大きな伸びを示す。 |
熱処理性
金属材料を熱処理することによって、所期の性質が適確かつ容易に得られる場合を熱処理性があるという。Β型チタン合金も熱処理性にすぐれており、溶体化処理と時効処理を組合わせると析出硬化し、高い強度を得る事ができる。 |
熱伝導度
熱伝導率・伝導性ともいう。物体内の単位面積の等温面を通って、これと垂直な方向に、単位時間に流れる熱量と、その方向の温度勾配との比。金属は自由電子により熱が伝達されるので、一般に大きな熱伝導度を示すが、チタンの熱伝導度は、銀や銅に比較すると小さく、それらの5%程度である。 |
梨地肌
酸洗肌。表面の状態の一つで、鏡面仕上げとは異なり、ザラザラした表面が特徴。酸洗した後の表面が、梨に似ている。
ナトリウム還元法
ニアα型チタン合金
スーパーα合金ということもある。Α相を主体とし少量のβ相を含む組織で、高温強度の向上をはかった耐熱チタン合金。合金の組織による分類名ではあるが、用途もほぼ特定されるのが本合金の特徴である。耐圧チタン合金は、元素の拡散速度と相安定性の利点から、α相単相合金として開発されたが、α相での固溶強化のみでは同時に脆化が生じることが明確にされ、少量のβ相をふくむ組織での合金設計に方向転換して、着実に耐用温度を高めた経緯がある。この名称は、α単相に近い組織であることから名付けられた。
二塩化チタン
融点1035℃。黒褐色の結晶。潮解性があり、空気中に放置すれば塩酸とチタンの酸化物に加水分解する。三塩化チタンを水素中で440℃に加熱すれば、2TiCl3=TiCl2+TiCl4の不均化反応によって粉末状の二塩化チタンを得る。
熱安定性
耐熱性ともいう。高温で使用される材料に必要な性質である高温強度・クリープ強度・疲労強度・耐酸化性などが高温で長時間維持されること。金属材料の多くは、機械材料や構造用材料として常温付近で使われるが、火力発電のボイラー蒸気タービン、ガスタービン、石油化学工業の反応装置、ジェットエンジン、自動車のエンジンなどの高温部を構成する材料は500℃から最高1400℃で使用されるので、それぞれの温度で長時間の使用に耐えること、すなわち熱安定性が必要である。これらの目的のためには耐熱鋼や耐熱合金が使われる。
チタン合金では、α型チタン合金が熱安定性にすぐれ、耐酸化性では550℃、強度的には最高600℃までの使用が可能である。
熱化学処理
略称TCT。水素を一時的な合金元素として利用し、組織制御をほどこす熱処理。
熱間圧延
材料を高温に加熱し、圧延する方法。チタン材を熱間圧延する場合、一般的には純チタンで700~900℃、チタン合金で1000℃以上まで加熱される。
熱間加工
熱間成形
板を温間よりさらに高温に加熱して行う成形加工。チタンの場合、約600℃以上の成形をいう。
熱間鍛造
高温で行う鍛造。チタンの鍛造は高温で行う事が通常なので、ほとんど全て熱間圧延と言って良い。純チタンの場合は加工性が良いが、チタン合金の場合は難しい。加熱してハンマーで叩き、金属内部の空洞をつぶし結晶を微細化し結晶の方向を整え、強度高めると同時に目的の形状に成形する加工技術。
熱交換器
熱交換器というのは、温度の異なる2種類の流体の間で高温側流体の、熱エネルギーを低温側の流体に伝える装置のこと。一般的には、2流体の間を金属板などで隔ててその金属板を通して熱エネルギーの伝達が行われる。チューブアンドシェルタイプの熱交換器が多いが、プレート式熱交換器も広く一般化している。
熱処理
熱分解

フープ
薄肉溶接管用のストリップのこと。ストリップを溶接する前に、輪状にロール成形するのでフープという。純チタンのフープはコールドストリップを目的の溶接管に必要な幅に合わせてスリットしてつくる。
ピッチ
[pitch]
石炭・石油・木材などの有機物質の乾留によって得られるタールを蒸留したときの釜残渣。石炭からのピッチはコールタールピッチ、石油からのものは石油ピッチといい、石油ピッチは加工されてアスファルトになる。通常単にピッチというときはコールタールピッチをさすことが多い。粘結剤のほか鉄材・木材などの防水・防錆・防腐などのための塗料として用いられる。
チタン製造に関しては、かつて団鉱塩化法で四塩化チタンを製造していたときに団鉱製造の粘結剤として用いられた。
ビーチャー法
[Becher process]
イルメナイトから合成ルチルを製造する方法の一つ。R.G.Becher らによって開発され、オーストラリアのWestern Titanium 社などで工業化された。
イルメナイトをロータリキルンで加熱し、炭素によってイルメナイト中の酸化鉄を金属鉄の状態にまで還元し、これを塩化アンモニウム(NH4Cl)水溶液中で攪拌しながら空気を吹きこんで鉄を酸化させて微細な酸化鉄として分離除去する。酸化鉄が除去された生成物は約2%程度の薄い硫酸溶液で残留する鉄とマンガンを溶出させ、ろ過・洗浄・乾燥して製品とする。酸化チタン(TiO2)92%程度の黒色合成ルチルが得られる。
非鉄金属精錬
[non-ferrous metals refining]
銅・亜鉛・ニッケル・コバルトなどの非鉄金属は鉱石を硫酸などで溶解し、その溶液中で電気分解することにより、液中に溶存している目的とする金属を陰極に析出させ高純度金属を得ている。これを電解採取という。銅を除く他の非鉄金属の電解採取では、陽極に貴金属を被覆した純チタン(工業用純チタン)が用いられている。また、二酸化マンガン(MnO2)の電解製法の場合にも陽極材として純チタン板が使われている。硫酸マンガン電解液中で電気分解し、純チタン製陽極板上にMnO2を析出させてつくられている。
高純度の銅は不純物の多い粗銅を2回の電気分解によりつくられている。1回目の電解は銅鉱石を処理した粗銅を陽極にして硫酸酸性溶液中に溶かし、溶出した銅イオンを陰極(母板という)に析出させ、それを母板から剥離して純度のよい銅薄板(種板という)をつくる。2回目の電解では陽極は粗銅であるが、種板を陰極にしてその上に高純度銅を析出させて電解銅を得ている。1回目の電解での母板に純チタン板が検討された。電子工業などで用いられる高純度銅箔は純チタン製ドラムを陰極にして、その表面に銅を析出させてつくられている。チタン表面に析出した銅を剥離しやすいからでもある。
非金属介在物
[non-metallic inclusion]
一般的には、金属材料の製造過程で混入・生成し、除去されずに介在してしまった酸化物・窒化物・硫化物などの第二相。一種の材料欠陥とみなされている。チタン材料における介在物は、他の金属材料にくらべて、やや特異な面がある。
チタンで酸素・窒素などの溶解度が大きく、凝固過程で酸化物や窒化物を生成する可能性は少ない。さらに、固相における冷却過程での変態により固溶限が減少して析出する挙動もおこらない。このように、チタンは製造過程で介在物を生成する可能性は低い材料である。一方、チタンは主として消耗電極式真空アーク溶解で溶製され、低い過熱温度と短い滞留時間という溶解条件にさらされる。そのため、原料に一度混入した介在物を低減させたり、高融点添加材料を溶かしこむのは不得意である。介在物の主な成因は、原料に混入・添加したものの溶け残りである。
このように、チタンには他金属にみられる非金属介在物は少ないが、溶解せずに残留した介在物があり、それらはLDIとHDIに分類される。
微細粒超塑性
[fine grain superplasticity]
金属材料が超塑性を発現する原因のうちの一つ。数μ以下の微細な結晶粒からなる金属材料を、材料の融点の2分の1近辺の温度で、ゆっくり(10 -2~10 -4 s -1 のひずみ速度で)塑性変形させた場合、数100~数1000%のきわめて大きな塑性伸びを示す現象。
加工温度での結晶粒の成長速度が遅いことが必要条件である。
比重
[specific gravity]
ある物質の密度と標準物質の密度との比。標準物質としては、普通は4℃の水(密度は0.999973g/c㎥)が用いられる。4℃の水の密度はおおよそ1g/c㎥なので、実用金属の比重は、密度と同じ量の無名数として扱う。
パイプ
管のこと。厚肉の管とか、大きい直径の管をいう場合が多い。アメリカの規格ASTMでは、管の寸法に関係なく、復水器と熱交換器用の管をチューブ、それ以外の管をパイプという。
バイモーダル組織
[bi-modal microstructure]
等軸α組織と針状α組織の共存する組織。通常、二重溶体化処理をほどこして調整される組織である。α-β二相共存温度域の高温側で溶体化処理をほどこした後、低温側での溶体化処理をほどこす。前者の処理により等軸α、後者の処理によりβ相内で針状α相の析出が生じ、両組織の共存する組織が得られる。この組織への制御により、亀裂の発生と伝播に関連する両特性の同時改善が可能になる。
バウシンガー効果
[Bauschinger effect]
金属材料に弾性限以上の引張応力を加えて塑性変形させた後,逆方向に応力を加える,すなわち圧縮応力を加えると,加工硬化しているのにもかかわらず,2度目に引張応力を負荷したときに示すであろうはずの弾性限よりもはるかに小さな応力で塑性変形する現象。その原因には諸説あるが,圧縮応力による変形の場合,引張応力による変形プロセスの逆をそのままたどるのではなく,むしろ駆動力になる成分が加わるとして説明されている。この効果は,材料の動的な機械的性質である疲労と密接な関係がある。
破壊靭性
[fracture toughness]
亀裂をもつ材料の,破壊に対する抵抗力を破壊靭性といい,これを定量的に表すパラメータを破壊靭性値という。金属材料では,内部に亀裂が存在すると,材料に平均的に作用する応力が降伏応力以下であっても脆性破壊が発生し,その発生条件は,破壊時の亀裂長さCcと応力σfで定まるKc=σf√πCcで与えられる。このKcが脆性破壊の発生を支配する材料定数で,破壊靭性あるいは臨界応力拡大係数とよばれる。
箔
[foil]
フォイルともいう。板厚が0.2mm未満の極薄板。 純チタンおよびβ合金の箔は冷延により製造可能であり、10μm以下の厚みの箔が製造されている。 カメラのシャッター膜には1960年代から採用されており、音響製品の振動板などの用途がある。
発色
[coloring]
材料の表面が色を出すこと。チタンの表面に大気酸化法・陽極酸化法により酸化皮膜をつけると、膜の厚さにより種々の色が発色する。膜厚が薄い方から厚い方へ、ゴールド・ブラウン・ブルー・イエロー・パープル・グリーン・グリーンイエロー・ピンクの順で発色する。マスキングなど工夫をこらすことにより、複雑多種な色を持つ鴨などの鳥や浮世絵などが陽極酸化法でつくられている。硫酸とフッ酸を組合せた化学酸化法で黒色も得ることができる。チタン窒化物の黄金色はイオンプレーティング・スパッタリング・イオン注入で得られる。
発色性
[coloring ability]
金属の表面に酸化皮膜を形成させ、種々の色を人工的に発色させることができる性質のこと。発色の原理は光の干渉によるもので、白色光による干渉の場合、明暗の条件が波長により異なるために、皮膜の厚さにより異なる色が発生する。しゃぼん玉や水面上の油膜など、薄膜の色もこの干渉色である。
チタンを陽極酸化させて、表面に薄い酸化皮膜(TiO2)を形成させると、その厚さによって、種々の色を発色させることができる。
バッチ
[batch]
「一窯分、一塊り」などの意。
現行のクロール法によるチタン地金の製造では、1反応容器ごとにつくられる地金の塊をバッチという。
バッチ法
[batch process]
容器の単位ごとに進めるプロセス。連続法と対比される。現行のクロール法によるチタン地金の製造では、還元・真空分離などの工程は連続化が困難でバッチ法によっている。一般にバッチ法は連続法にくらべ生産効率が低いので、これらの工程の連続化は、コストダウンのための大きな問題である。
張出し成形
[stretch forming]
板状素材の成形加工の一つ。面内で2軸引張りを加えて成形する方法。板の周囲を固定して、ポンチや液圧で表面積をふやし、ポンチやダイの形状に成形するので、周辺部から材料は流入せず板厚が薄くなる。
一般に、加工硬化が大きい材料は張出し性にすぐれている。張出し性は通常エリクセン値で評価される。
純チタンの張出し成形は、チタン全需要の約5%であるプレート式熱交換器板に使う。純チタンは加工硬化が小さいので張出し性はステンレス鋼ほどよくないが、純度を上げることや結晶粒を大きくすることにより改善できる。
半導体
常温での電気伝導度は金属に比例するとはるかに小さいが、温度が高くなるにつれて増加し、高温ではかなり大きな値となる物質。電気伝導度が導体と絶縁体の中間に位置することからこの名前がつけられた。半導体では、熱エネルギーによって、価電子帯の電子が 励超されエネルギーギャップを飛びこえて伝導帯に移りその結果、伝導帯に移った電子と、価 電子帯にできた正 孔とが電荷のキャリアとなって電流が流れる
反応容器
[reaction retort , reduction vessel]
そのなかで化学反応などをおこさせる容器。種々の製造業で各種の反応容器が使用されている。
チタン地金の製造では、クロール法の工程で、反応容器を使用する。生産性向上などのため、近年この反応容器は大型化され、1容器で4~10トンのチタンを製造できるものが主流になっている。形状・寸法・材質・使用温度などはつぎの通り。
形状は円筒形で底部は半球に近い形、上部は脱着可能で密閉化可能の蓋つき。寸法は10トン用で内径約2m、深さ約5m、肉厚約30mm。材質はオーステナイト系ステンレス鋼が主流。使用最高温度は約1050℃。
非磁性材料
[non-magnetic material]
磁性を示さない材料。正確には、強磁性材料の反義語で、常磁性体と反磁性体とをふくむ。チタンはα相、β相のいずれも非磁性で、すべてのチタン合金が非磁性材料である。そのため、強磁場中で強度を必要とする用途に適している。
ビッカース硬さ
対面角が136°のダイヤモンド製の四角錐圧子を用いて、これを一定荷重で試験片に押し込み、逆ピラミッド型のくぼみをつけたときの、荷重Fと永久くぼみの面積Sとの比F/Sで定義される硬さ。硬さの記号はHv。なお、JIS規格には、試験荷重は50gfから50kgfまでが規定されており、荷重が50gfから1kgfまでのものはマイクロビッカース硬さとして区別されている。
引張強さ
[tensile strength]
抗張力ともいう.引張試験における最大引張荷重FMAXを試験片平行部の原断面積A0で除した値σB. σB=FMAX/A0.
純チタンの場合は,純度によって270~620MPaの幅がある.酸素・窒素・炭素などの元素をふくむと強度がいちじるしく高くなるが,その反面延性が低下する.最密六方構造のhcp相を基本とするα型およびニアα型合金では500~1150MPaである.体心立方構造のβ相を安定化させる元素であるバナジウム・モリブデン・クロム・鉄などをふくみ,熱処理による時効硬化性のあるα-β型合金では650~1300MPa程度の引張強さであり,β安定化元素を多量に含有し,高い時効硬化性を有するβ型合金では1200~1500MPaの引張強さが得られる.
不動態
金属やその合金を腐食性の水溶液、たとえば酸の中に入れた時、熱力学的には腐食されるはずのものが腐食されない状態。金属がイオンとして溶け出すときに酸素が発生し、この酸素が金属に吸収着されて緻密な酸化物皮膜を形成し表面全体を覆うためである。チタンおよびチタン合金の耐食性がすぐれているのは、この不動態酸化皮膜が形成されるためである。
BA仕上げ
[BA finish]
BAはbright annealedの略。
光揮焼なまし仕上げのこと。チタンの場合は、真空焼なまし仕上げのこと。BA仕上げした表面をBA肌ともいう。
粉末冶金
金属製品を作る加工方法の一つ。金属粉末を使用した製品に関連する技術分野の総称。
具体的には、金属粉末の製造、金属粉末を使用した製品の製造・特性改善・用途開発などの技術分野をいう。
チタンの粉末冶金は、チタン粉末の製造法、粉末を利用したチタン材料の改善、自動車部品などへの適用などチタン粉末に関する全ての分野を含む。
β焼きなまし
完全焼きなまし。Β域へ加熱して焼きなますこと。Β合金には使用するが、α-β合金にはあまり使わない。
放電加工
加工する材料と電極を液の中につけ、その間に電気を流して、加工する材料表面に火花放電させ、金属を溶かしまた一部蒸発することにより材料を除去して、希望する形状に加工する方法。
ホットコイル
熱間圧延または伸線により製造してコイル状に巻き取った材料。チタンの場合は、熱間圧延で製造したホットストリップと同じ意味で使うことが多い。
板状αコロニー組織
[α plate colony microstructure]
マルテンサイト組織の方向がそろったコロニー組織において、冷却過程で並列に板状のα相の析出が生じた組織。鋳造品や粉末冶金合金など、高温から徐冷されるプロセスで製造れる場合に生じやすい組織である。
爆発成形
[explosive forming]
板状素材の成形法の一つ。火薬の爆発エネルギーを利用し、衝撃波のエネルギーで希望する形状に形づくる方法。チタンへの応用はまれである。
腐食
ハーフ合金
Ti-3Al-2.5V合金。合金元素量が、Ti-6Al-4V合金の約半分である。チタン合金61種で、α-β組織を持ち、チタン合金の中では中強度で耐食、溶接性、成形性に優れている。
プレート
板の事。チタンでは英語のプレートはアメリカの規格ASTMにおいて板厚4.75mmより大きく、幅254mmより大きい板と規定があるが、日本語のプレートは特に規定がなく、シート(薄板)と明確な区別をしていない。 |
爆発圧着
バックシールド
引抜加工
ダイスと呼ばれる工具に通して、先端から材料を引っ張り、引き抜いて小さい寸法へ変形させる塑性加。押し出されるようにして材料の形状が変化されます
比強度
比強度:[specific strength]
金属材料が示す「引張強さ」を、その金属の「比重」で割った値を比強度という。
軽くて強い性質が要求されるものにおいては、重量あたりの強度特性を評価するための重要な指標となる。
被削性
比熱
比熱:[specific heat]
単位質量の物質について、その温度を単位温度(1K)上昇させるのに必要な熱量。
純チタンの比熱は、鉄より約10%高く、アルミニウムの約60%です。
非破壊試験
表面肌
プラズマ溶接
プラズマアーク溶接は,プラズマガスと拘束ノズルによる熱的ピンチ効果を利用して細く絞ったプラズマアークを熱源とする溶接方法。TIG溶接より集中性の高い安定したアークと溶融プールが得られる。溶接操作はTIG溶接と大差はない
ヘアライン仕上げ
圧延加工後の表面にグラインダー、研磨などでヘアラインをつける二次加工のこと。
ベータチタン
結晶構造に起因したすぐれた塑性加工性を共通点とする多くの合金が開発されている。
高比強度合金として実用されている合金はすべて準安定β型に属し、安定β型に属するものは耐発火、耐食、超伝導など特殊な用途で用いられる合金である。
ポアソン比
[Poisson's ratio]
金属材料に一軸引張応力を加えた場合,応力が弾性限以下であれば,引張軸方向の縦ひずみσzと軸と直角方向の横ひずみσyの比は一定で,これをポアソン比ν=σz/σyという.ポアソン比は,通常の金属では約0.3であり,チタンは0.34である.

摩擦圧接
接合する材料を押しつけて回転させ、発生する摩擦熱で加熱し短時間で接合する方法。固定させた材料に、回転する他の材料を一定圧力で一定時間押しつけ、ついで回転を急停止させ同時に高い面圧で保持して接合する。
マグネシウム還元法
四塩化チタン(TiCl4)をマグネシウム(Mg)で還元してチタンを得る方法。
曲げ成形
板状素材の成形加工の一つ。希望する形状に曲げる加工。深絞りや張出しが主体のプレス成形においても、曲げ加工は必ず付随するので、良い曲げ性質をもつことは重要である。曲げ性は、加工が可能な 最小曲げ半径で表し、小さいほどよい。曲げ半径は通常板厚tの倍数で表し、たとえば、t3は板厚の3倍の曲げ半径を意味する。純チタン板の曲げ性は純度が高いほどよく、強度が上がり延性が低くなるほど低下する。
マルテンサイト組織
MIG溶接
MIGは、metal inert gasの略。TIG溶接におけるタングステン電極のかわりに、溶接金属のワイヤーを連続的にトーチから供給して、ワイヤー先端と母材との間にアークを発生させ、その熱エネルギーで接合する方法。MIG溶接は溶接速度が大きく、TIG溶接と比較して高能率であり、厚板の溶接に用いられる。しかし、ブローホール(穴欠陥)が発生しやすく、溶接部外観は劣る。溶接ワイヤーは直径φ0.8~φ3.2mmが利用される。
密度
単位長さ当たり、単位面積当たり、単位体積当たりに含まれる質量のこと。それぞれ線密度、面積密度、体積密度という。単に密度という場合は、体積密度すなわち単位体積当たりの質量をさすのが普通である。純チタンの密度は4.51g/㎤であり、実用金属中では、マグネシウム・アルミについで小さい。チタン6-4合金の密度は4.43g/㎤。 |
ミル焼きなまし
実機焼きなましともいう。加熱・圧延プロセスを利用した多目的の焼きなまし。α-βチタン合金展伸材では、α-βプロセッシングで加工された後、700~800℃程度に保持・炉冷される処理である。組織はあまり変わらないが、残留応力は除去されている。
メッシュ
篩の目の大きさを表す単位。長さ1インチ(25.4mm)についての孔の数で示す。したがって、メッシュ数の多いものほど目が細かい。櫛を構成する網の針金の直径はメッシュ数により定められており、タイラー社製の標準網(2.5~325)メッシュの範囲のものがある)に準じ各国でほぼ同じ直径のものが使用されている。 |

誘電性
ある種の物質に静電場を加えると誘電分極を生じ、この分極がエネルギーを失うことなく維持される性質。すなわち直流電流が流れない性質を誘電性という。なお、この誘電性を示す物質を誘電体という。誘電性を示すチタン材料には、強誘電体(→強誘電性)であるチタン酸バリウム(BaTiO3)などがある。
溶射
金属やセラミックス粒子を高温に加熱溶融し、素材表面に高速で衝突させ被覆する方法。熱源として、フレーム・爆発・アーク・プラズマがある。大気中で処理可能だが、気孔などの欠陥が多く密着性が不十分である。チタン合金の表面に12%コバルトを含むタングステン炭化物をプラズマ溶射するとしゅう動疲労が改善する報告がある。
溶接
2個以上の材料の接合部に外部から熱の発生源を加えて、溶融することにより一体にすること。溶接には、アーク溶接・電子ビーム溶接・レーザー溶接・抵抗溶接などがある。
焼なまし(焼鈍)
焼鈍ともいう。高温に加熱し、その温度を保持した後、適当な速度で冷却して(通常徐冷)し、材料の均一性を改善するための処理。この処理の目的は、総括的には再結晶、硬化と組織均一化、各論理的には機械加工性の向上、塑性加工性の改善。 特性均質化などに分けられる。
ヤング率
縦弾性係数ともいう。棒材の材料の軸方向に応力を加えたとき、弾性変形の領域ではフックの法則が成り立ち、ひずみは応力に比例する。この比例定数をヤング率という。純チタンの常温でのヤング率はステンレス鋼の約半分の大きさ。
融点
溶解
原料を融点以上の温度に加熱して溶かすこと。金属加工では均一な所定の 組成の材料を作るために行う。チタンの溶解は、大気中の酸素・窒素などとすぐに反応するので、必ず真空中またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気で行う。
陽極酸化
酸の溶液中で金属を陽極して電解を行うことにより、金属の表面に酸化被膜を生成させる表面処理の事。さらに化学的に酸化膜を作ることにより、表面を丈夫にしたり、色を付けることもできます。純チタンの陽極酸化では、電解液にリン酸を用い、電解電圧をコントロールすることにより酸化被膜の厚さを微妙に制御できる。その結果、被膜表面と金属面からの反射光に起因する 干渉色も、種々な色を発色させることができる。
溶接管
板材から溶接でつくられた管。通常、継目無管より安価に大量生産が可能。チタンの溶接管は、板材をロール形成によりリング状にして、通常TIG溶接でつくられる。
溶体化・時効処理
[Solution treatment and aging]
略称STA。溶体化処理と時効処理とは通常組合せて適用される処理で、析出反応が最も効果的に進行する温度域での時効処理と組合せた処理。この処理は、高強度水準下ですぐれた延性・靭性の組合せを得るために適用される。たとえば、この処理の適用により、焼なまし材にくらべて、10~20%の高強度化が可能になる。
溶体化処理

リューコクシン
チタン鉱石の一つ。イルメナイトが長年の年月を経て変質して鉄分が消失し、チタン含有量が高くなったもの。西オーストラリアでイルメナイトと併産し、80~90%の酸化チタンを含有するものが市販され、日本では主として溶接棒の被覆材用に輸入されている。
冷却速度
熱処理温度から冷却する速度、処理の目的に応じて、徐冷・空冷・急冷が適用される。おおむね、徐冷と空冷は焼きなまし、急冷は溶体化処理に対応する。
冷却速度は、時効処理ではほとんど問題にならないが、処理温度が高いものほど問題になり、特に拡散変態の生成を阻止することが必要な溶体化処理ではもっとも重要な因子である。
粒界腐食
粒界またはそれに沿った部分が腐食されること。粒界腐食の原因は、金属や合金にふくまれる不純物元素や合金元素が粒界に偏析するためであり、偏析した不純物元素や合金元素が、粒界を電気化学的にアノードまたはカソードにする。粒界がアノードになった場合は、粒界自身が選択的に腐食され、カソードになった場合は、粒界に沿った部分が選択的に腐食される。ステンレス鋼中のクロムが粒界に偏析した炭素と結合して炭化物をつくるため、粒界近傍がクロム欠乏域となり、耐食性が低下する場合も粒界腐食に含まれる。
丸棒(ラウンドバー)
丸い棒。Round Bar(ラウンドバー)ともいう。
流動法
流動層を利用した反応プロセス。反応装置内で下部から流体を導入し、装置内の粉粒体を通過させるとき、流体の速度が大きくなり、ある速度を超えると粉粒体は流体内に浮遊懸濁し、液体と類似の性質を示すようになる。これが流動化という現象で、流動化状態にある 流動層あるいは流動床という。
リング鍛造
穴のあいたドーナッツ型素材を外径および内径側から加圧変形して、直径を大きくしリング状にする鍛造の事。
ルチル
金紅石ともいう。二酸化チタンの結晶型の一つ。融点は1830℃で酸には溶解しない。この結晶型の鉱石を ルチルと呼ぶ。
冷延板
冷間圧延により製造した板。広義にはコールドストリップを含む。
冷間圧延
常温で圧延すること。大きな変形はできないが,表面状態の仕上がりがよい。β合金は、変形抵抗は高いが純チタンと同様に冷間加工性がよく、箔まで冷間圧延が可能である。
冷間加工
材料を加工する前に加熱することなしに常温で塑性加工をすること。
冷間鍛造
常温において型を用いて希望する形にする鍛造。純チタンやβ合金はまれに製品により常温で型打鍛造をする。これを冷間鍛造または冷鍛という。
冷間引抜き
常温で行う引抜き加工のこと。
レーザー溶接
ろう付け
ローラーダイス加工
上下二対のローラーを直角に組み合わせたダイスによる引抜加工(伸線加工)従来の固定穴ダイスより回転するので摩擦が減少し、小さい引抜き力で大きな加工が出来る。難加工材に適している。チタンは焼付きやすく変形抵抗が高いので、潤滑面で有利なローラーダイス加工が用いられる。
ロストワックス
ワイヤーロープ
複数の線をねじり1本にした縄(ロープ)。

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東京チタニウムの企業姿勢・理念、現在に至るまでの社歴をはじめ、会社の基本情報、保持取得資格を公開しています。
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従来の加工法の視点を変え、新たな加工方法を産み出すことで「時間と材料のムダ」を省く、弊社からのご提案です。
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日本国内で、そして世界へ。弊社の医療用チタン製品は生活と密接した分野。その製品と活動をそれぞれご紹介いたします。