チタンとは

チタンについての特徴をご紹介

チタンとは

チタンの歴史

金属として身近なものは「鉄」「銅」「アルミ」などがあります、銅は6000年前、鉄は4000年前から、実用金属でもあるアルミは100年以上前より使用されています。
 
「チタン」は1790年にイギリスの鉱物学者であったウィリアム・グレゴーが海岸で発見したとされており、その後1795年にドイツの科学者であるクラプロートが鉱石より新しい元素として「チタン」を見出しました。
1910年にはアメリカの化学者ハンターがついに純度99.9%のチタンを抽出することができ、これが初めて純粋な「金属チタン」が誕生した瞬間です。
発見から純粋なチタンを得るまでに100年を超える年月が掛かった事が分かります。
実用化が開始されたのはルクセンブルクの化学者クロールの発明したマグネシウム還元法が確立した1946年です。
 
金属としてはまだ新しく実用化されてから約80年であり、可能性を秘めた夢の金属とも言えるのです。

チタンは元素記号「Ti」で原子番号は22番目に位置している銀灰色の金属となります。
「チタン」-Titanと言う名前はギリシャ神話の巨人を意味するタイタン-Titans 、Titanen に由来すると言われております。他の金属に比べて「チタン」は軽量・高強度・高耐食性の3拍子が揃っておりますので陸・海・空・宇宙の幅広い分野で今後も活躍が期待されております。

チタンの特徴

「チタン」は軽い・強い・錆びにくい、厳しい使用条件・環境にも対応、多彩なメリットを持つ魅力あふれる実用金属です。「チタン」の代表的な特徴を見ていきましょう。

軽量

「チタン」は比重(水1.0)が純チタン4.51、チタン合金4.43であり銅8.9の1/2で鉄、ステンレス7.9の約60%という軽さとなります。アルミ2.7、マグネシウム1.7よりは重くなる。

高比強度

「チタン」の強度を比重で割った値は純チタンで普通鋼並み、チタン合金ではアルミニウムの約3倍、普通鋼の約2倍の強度があります。ステンレス、アルミよりも高い比強度をしめします。

物理的性質(他金属材料との物性比較)

チタンの物性値(他金属材料との比較)

  純チタン
Commercially Pure Titanium
(CP2種)
(Grade 2)
α-βチタン合金
α-β Titanium Alloy
(Ti-6Al-4V)
βチタン合金
β Titanium Alloy
(Ti-15-3-3-3)

Steel
t5
(SS400)
ステンレス鋼
Stainless steel
(SUS304)
アルミニウム
Aluminum
t1
(1100-H18)
アルミニウム合金
Aluminum alloy
t1
(A7075-T6)
マグネシウム
Magnesium alloy
AZ31
(MP1B-0)

Copper
t4
(1020-O)
ニッケル
Nickel
ハステロイC
Hastelloy
(NW0276)
溶融点(℃)1,6681,6501,6681,5301,400
~1,420
646
~657
476
~638
6501,0831,4531,305
0-180-138-248~-248-1011-1033-1018-585-215-363
結晶構造 HCP
<885℃
BCC
HCP+BCC
<990℃
BCC
BCC
<830℃
FCC
FCCFCCFCCFCCFCC
密度(g/cm3)4.514.434.767.857.902.712.801.748.938.908.9
倍率1.000.981.061.741.750.600.620.391.981.971.97
原子番号 2222(Ti)2626(Fe)1313(Al)2928
原子量 47.9055.8526.9763.5758.69
電気抵抗
(20℃)
(μΩ⋅m)0.551.711.40.0970.720.030.0520.0440.0170.0951.3
倍率1.03.112.550.181.310.050.090.080.030.172.36
熱伝導率
(20℃)
(W/m⋅K)177.58.0863162201301673949213
倍率1.000.440.483.710.9413.767.659.8223.185.410.76
比熱(KJ/kg⋅K)0.5190.6100.5000.4600.5020.8790.9621.0380.3850.4600.385
体積比熱(W/cm3⋅K)2.32.72.43.64.02.42.71.83.44.13.4
倍率1.01.171.041.571.741.041.170.781.481.781.52
線膨張係数
(20℃)
(/K×10-6)8.48.88.512.017.023.623.62617.11511.3
倍率1.01.051.011.432.022.812.753.102.041.791.35
透磁率(μ/μ0)1.000051.0001.00010.1.01.01.01.01.01.01.0
備考   高い 強磁性非磁性非磁性
(常磁性)
非磁性
(常磁性)
非磁性非磁性
(反磁性)
強磁性強磁性

チタンの機械的性質(他金属材料との比較)

  純チタン
Commercially Pure Titanium
(CP2種)
(Grade 2)
α-βチタン合金
α-β Titanium Alloy
(Ti-6Al-4V)
βチタン合金
β Titanium Alloy
(Ti-15-3-3-3)

Steel
t5
(SS400)
ステンレス鋼
Stainless steel
(SUS304)
アルミニウム
Aluminum alloy
t1
(A7075-T6)
アルミニウム合金
Aluminum
t1
(1100-O)
マグネシウム
Magnesium alloy
AZ31
(MP1B-0)

Copper
t4
(1020-O)
ニッケル
Nickel
ハステロイC
Hastelloy
(NW0276)
引張強さ
(規格値)
Tensile strength
(standard value)
(MPa)39095782840059070570250233319892
比強度
(計算値)
862161745174262041402636100
0.2%耐力
(規格値)
0.2% proof stress
(standard value)
(MPa)270888789179255305051806959490
比耐力602001662332111801008755
伸び
(規格値)
Elongation
(standard value)
(%)3811184860431115483045
ビッカース硬さ
Vickers hardness
(representative value)
(HV)160320270130180256090
n値
(代表値)
n value
(representative value)
 0.1450.0800.0610.2380.4040.250.150.359
r値
(代表値)
r value
(representative value)
 4.271.171.011.321.010.874.201.15
エリクセン値
(代表値)
Erichsen value
(representative value)
(mm)9.712.013.011.010.5
低温性質 T.S.=1,000N/mm2T.S.=1,400N/mm2T.S.=1,600N/mm2使用可能T.S.=400N/mm2
伸びEl=40%El=15%El=30%El=50%
ヤング率
(代表値)
Young’s modulus
(representative value)
(GPa)106.311078.4205.8199.9697145107.8205.8204.4
1.001.030.741.941.880.650.670.421.011.941.92
ポアソン比
(代表値)
Poisson’s ratio
(representative value)
 0.340.330.310.30.330.330.350.340.30
スプリングバック性1/E9.49.112.84.95.014.514.122.28.6

高耐食性

「チタン」は多種多様な環境で極めて安定した不動態皮膜(自然に生成する酸化被膜=TiO2)で保護され、海水中では白金に次ぐ耐食性を持っている。「チタン」は極めて活性な金属のため酸素との結合力が強く、被膜に疵が発生しても瞬時に自己修復する。化学プラントなどの場合は腐食減肉速度が5mils/年以下(NASE)、即ち0.125㎜/年以下の腐食速度がある場合に耐食性が良いとしている。「チタン」は高濃度の非酸化性の強酸、沸騰ギ酸及びクエン酸などでも腐食する。また、ステンレスSUS304、SUS316とは電位が近く異種金属接触腐食の程度は軽い。

腐食媒組成
(%)
温度
(℃)
耐食性比較
チタンSUS304ハステロイC
塩酸
Hydrochloric acid
1024×
3024××
1080×
3080×
硫酸
Sulfuric acid
1024
5024××
10100×
50100×
硝酸
Nitric acid
1024
5024
10100
50100
王水
Aqua regia
HCI・HNO324×
3:1100
クロム酸
Chromic acid
524
弗化水素
Hydrofluoric acid
530××
燐酸
Phosphoric acid
10(通気)24
50(通気)24
10(通気)100×
50(通気)100×
塩化第二鉄
Ferric chloride
1024×
3024×
10100
30100
塩化第二銅
Cupric chloride
1024×
3024×
10100
30100
塩化ナトリウム
Sodium chloride
1024
4024
10100**
40100**
塩化カルシウム
Calcium chloride
1024
5024
10100*
50100*×
塩化アンモニウム
Ammonium chloride
1024
4024
10100*
40100*
塩化マグネシウム
Magnesium chloride
1024
4024
10100**
40100*
硫酸第一鉄
Ferrous sulfate
1024
5024
10100
50100
腐食媒組成
(%)
温度
(℃)
耐食性比較
チタンSUS304ハステロイC
アンモニア
Ammonium
1024
3024
1080
3080
苛性ソーダ
Sodium hydroxide
1024
5024
10100
50100
炭酸ソーダ
Sodium carbonate
1024
3024
10100
30100
硫化水素
Hydrogen sulfide
乾燥ガス24
湿潤ガス24
塩素
Chlorine
乾燥ガス24×
湿潤ガス24
乾燥ガス100
湿潤ガス90
亜硫酸ガス
Sulfur dioxide
乾燥ガス30-60
湿潤ガス30-90
海水
Seawater
高流速24
静止水100*
酢酸
Acetic acid
1024
6024
10100
60100
蟻酸
Formic acid
1024
5024
10100×
30100××
乳酸
Lactic acid
1024
5024
10100
50100×
蓚酸
Oxalic acid
1024
2052×
5024
10100
50100×
クエン酸
Citric acid
1024
5024
10100
50100××

注)*は孔食その他の局部腐食を起こす場合があります

記号の説明 ◎<0.127、○=0.127-0.508、△=0.508-1.27、×>1.27mm/year

生体適合性

「チタン」は生体適合性を有するといった特徴もあり、無毒性、低イオン溶出を活かし人工歯根、心臓ペースメーカーなどの体内に埋入するインプラント材として用いられている。特に使用量が多い分野として整形外科領域では脊椎固定器具、ボーンプレート、人工股関節、骨頭などの骨組織と光学顕微鏡レベルで直接密着します。チタンはニッケルやクロムコバルトなど、他の金属と比べてアレルギーを発症しにくい。

非磁性

チタンの透磁率は1.001で完全な非磁性体に近い非磁性である。磁石に付かない、磁石にならないという非磁性の性質を用いて、超電導装置、磁気共鳴画像診断装置(MRI)にも使用される。MRI環境下では完全非磁性ではない為、アーチファクトなどの影響は避けられない。また磁気テープを扱うハサミや磁気機雷を除去する工具などにも実際に使用されている。

不燃性

チタン展伸材は不燃材料に認定されている。しかし切粉、粉末などは燃焼する恐れもある為、取扱いには注意する必要がある。

低熱伝導率、低電気伝導率

純チタンの熱伝導率は鉄の1/3、アルミの1/10、銅の1/20であり、チタン合金(Ti-6Al-4V)はさらに低い。切削、溶接加工時にはこの熱に留意する必要がある。また、純チタンの電気伝導率では鉄の1/5、アルミの1/20、銅の1/30と熱伝導率よりさらに低い。言い換えれば電気と熱を伝えにくい実用金属でもある。

線膨張係数

鉄、ステンレス、銅の約1/2、アルミの1/3とチタンの膨張係数は小さい。その為、航空機分野ではカーボン素材(CFRP)との相性が良く、航空機部品への使用量が増えてきている。